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味と形のマルチモーダル対応

近年の味と形の感覚間対応の研究は、デロイらの研究(Deroy & Valentin, 2011)をその始点とみることができよう。

デロイらは、フランス人被験者を対象として、3 種類のビール飲料をブラインドで提示し、丸みや尖りを特徴とする 2 次元図形と3 次元図形を、計 34 種の中から選択させ、同時に単語で味の特徴を報告させるという実験を行った。その結果として、苦味が尖り図形と親和性が高く、甘味が丸み図形と親和性が高いことを示した。

デロイらを嚆矢として活発となった形と味の感覚間対応(cross modal correspondences)に関する実験心理学的研究においては、いわゆるブーバ・キキ効果の実験に用いられるような、角張った図形と丸みを基調とする図形から味の印象
に沿うものを選択させるという、強制選択式の実験が主に行われる。

味と形の感覚間対応の研究は、その普遍性の議論として、文化人類学的な広がりをもみせる。ブレムナーらの研究は、ナミビアのヒンバ族での調査によって、苦味や炭酸のテクスチャが丸い形として表象されることが示されるなど、西洋言語話者
の一般的傾向とは対立する表象傾向が報告されている(Bremner et al., 2013)。

以上のような、味と形の感覚間対応について、現段階のレビューとしては、食品パッケージデザインへの応用を目指したヴェラスコらの論文(Velasco et al., 2016)に詳しい。レビューにおいては、多くの実験で甘味とまるい形が、苦味と酸味にと
がった形が対応するということが示唆されている。

既存研究の問題点

味覚分野における感覚間対応の研究は、このように興味深い結果を多く示してい る。

しかし、その実験手法と解釈に関しては疑問符を付さざるを得ない研究が多い ことも事実である。
これまでの研究で標準となっている、対立する特徴を有した 2 種ないし複数種の図形を見せた上で、味と対応するものを選択させる課題(forced choice task)の実験手法の抱える問題は、主に以下の点に集約される。
すなわち、

1. 形のどの部分と味のどの要素が対応しているのかが不明
2. 対応づけの根拠、動機が不明
3. 実際の飲料ではなく、たとえば甘味であれば糖の水溶液を用いる実験が多い

というものである。

この問題点を克服するために、私の研究では選択課題ではなく描画法による表象生成課題を実施しています。

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